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ウェーブレット画像解析
新島 耕一 著
9,800円
A5 328頁
4-87653-030-0 C3055
1章 はじめに

ウェーブレットは、1980年にフランスの石油探査技師 J. Morlet によって考案された時間(あるいは空間)周波数変換である。その後、理論研究および応用研究が急速に展開され、いまも活発な研究が続いている。とくに、画像処理の応用研究はめざましいものがある。ただ、フーリエ変換と異なり研究の歴史が浅いため、画像処理に対する強力な手段とし認知されていない面をもっている。
しかしながら、欧米ではウェーブレットの研究者の数が日本にくらべて一桁違いくらい多く、研究が盛んなことから,やがては画像圧縮に対するJPEGやMPEG等のように、近い将来、標準化されるレベルまで理論が確立されるのではないかと思われる。

2章 離散ウェーブレットとは

連続ウェーブレットは、連続的な時間シフトと連続的なスケールをパラメータにもつ関数であるが、これらのパラメータが離散的な値をとるとき、離散ウェーブレットとよばれる。この本では離散ウェーブレットの中でも、スケールが2の巾乗の形をした離散ウェーブレットのみを考察の対象にする。連続ウェーブレットも離散ウェーブレットもそうであるが、ウェーブレットの最大の特徴は、積分すると0になることである。これは、ウェーブレット関数が信号の高周波成分を取り出すためのフィルターであることを意味する。そして、シフトパラメータを動かすことにより時間あるいは場所を特定することができ、そこでスケールを変えると各レベルの高周波成分を取り出すことができる。

3章 Daubechies のウェーブレット

2章で述べているように、ウェーブレットは高周波フィルターであるから、そのサポートは有限長であることが望ましい。これまでに多くのウェーブレットが提案されているが、サポート長が無限である場合が多い。Daubechies のウェーブレットは、有限長のサポート (しばしばコンパクトサポートとよばれる) をもつ直交ウェーブレットで、Daubechies によって 1988年に考案された。

Daubechies のウェーブレットは有限のサポート長をもつということで有名になり、様々な分野で応用されている.このウェーブレットはサポート長が短いので11章の線画の編集や12章の移動物体検出に応用される。

4章 合成積型ウェーブレット

このウェーブレットは、ごく最近、著者らによって開発されたウェーブレットで、一種の双直交ウェーブレットである。このウェーブレットは合成パラメータを含んでおり、そのパラメータを選択することによって、Daubechies のウェーブレットになったり、対称でほぼコンパクトサポートなウェーブレットが得られたりする。ここで得られた対称なウェーブレットは線形位相をもつので、このウェーブレットを用いて画像を高周波成分に分解したとき、エッジにずれが生じない。また、高周波成分が強調されるといった特徴をもっている。

5章 双直交スプラインウェーブレット

スプライン関数を土台にして作られた双直交ウェーブレットで、スプライン関数の選び方によって、様々な双直交ウェーブレットが構成できる。ここでは3種類のスプラインウェーブレットの作り方が述べられている。これらのウェーブレットは、対称性と滑らかさを兼ね備えており、9章の画像のエッジ検出や10章の画像圧縮に応用される。

6章 擬ウェーブレット

このウェーブレットは近似直交ウェーブレットで、完全直交ウェーブレットではない。このウェーブレットは、コンピュータグラフィックス分野におけるタイリング技法を高速化するために開発されたものであるが、本書では13章の動きベクトル検出に適用される。

7章 Mallat 変換と多重解像度解析

離散ウェーブレットを画像処理に応用する場合,Mallat 変換がもっとも重要な役割を演ずる.Mallat 変換とは,離散ウェーブレットを用いて、画像を低周波成分と高周波成分に分解したり,それらの成分からもとの画像を復元したりする変換のことである。Mallat 変換に関しては、ツースケール係数とウェーブレット係数のみを含んだ高速の分解公式と復元公式が知られており、これらの構造は、6章までに述べられているウェーブレットに共通している。

まず、原画に分解公式を適用すると、第1低周波成分と第1高周波成分が得られる。さらに、第1低周波成分を原画像とみなして分解公式を適用すると、第2低周波成分と第2高周波成分が得られる。このように次々に分解公式を適用すると、たった一つの低周波成分と、解像度の異なった高周波成分の集まりが得られる。もちろん、復元公式を用いると原画像を復元できるので、分解によって得られたこのような低周波成分と高周波成分の集まりは原画像と同等である。たった一つの低周波成分は、原画像と比べて4分の1の巾乗の情報量しかもたず、多重高周波成分は0に近い画素値を多く含んでいるので、原画像のかわりに一つの低周波成分と多重高周波成分にもとづいて画像処理を行なった方が効率がよい。以後に述べる様々な応用では、すべてこのことを利用している。

8章 画像の分解と復元

7章で述べた分解公式は、もともとは1次元信号に対するものである。画像に対してはそれを横方向とたて方向に適用すればよいのであるが、その組合せはいろいろ考えられる。組合せ方によって、大きく標準分解と非標準分解に分かれるが、それぞれで高周波成分の出方が異なる。したがって、分解画像にもとづいて画像処理を行なう場合、標準分解を用いるか非標準分解を用いるかによって処理結果に違いが出てくる。この章では、標準分解公式と非標準分解公式を導き、それらの違いをシミュレーションをとおして示している。

9章 画像のエッジ検出

2章で述べているように、ウェーブレットは信号の高周波成分を取り出すフィルターであるから、7章で述べた分解公式を用いると、標準分解や非標準分解にかかわりなく画像の高周波成分が取り出せる。このような高周波成分は、画像の変化の激しいところを反映したものであるから、画像のエッジも当然含んでいる。しかも、各レベルの高周波成分から、各レベルのエッジが取り出せることになり、きめの細かいエッジ検出が可能になる。

10章 画像圧縮

ウェーブレットの画像処理への応用ですぐ考えられるのが画像圧縮である。それは、7章で述べているように、画像の分解によって得られた高周波成分が0に近い成分を多く含むからである。0に近い成分をすべて0にする、つまり、量子化することによって大幅に情報量を減らすことができる。そして、情報量の少いたった一つの低周波成分と量子化された高周波成分を用いて、復元公式により画像を復元すると、ほとんど原画像に近い画像が得られる。離散コサイン変換(DCT)にもとづいたJPEGを用いた画像圧縮法は、画像をブロックに分け高周波成分そのものをカットするため、復元したときにブロック歪みやモスキートノイズが現れるが、ウェーブレットを用いた画像圧縮ではそのような傷害は現れない。ただし、DCTは高速フーリエ変換を用いているために、ウェーブレットによる画像圧縮法より処理時間はかからない。

11章 線画の編集

線画は平面曲線の集まりととらえることができ、それぞれの平面曲線はパラメータ表示された2次元座標で記述できる。したがって、2次元座標のそれぞれの要素に対してウェーブレット分解を行なえば、低周波曲線と高周波曲線が得られる。これらに変更を加えたのち復元公式を用いて復元すると、もとの線画と異なった線画が得られる。変更の仕方は自由なので、いろいろな線画の編集を行なうことができる。

12章 移動物体検出

動画像を複数のフレームに分け、時間方向にならべておく。画像の各ピクセルごとに時間方向の画素値をならべて時系列信号を作ったとき、物体が動いていれば画素値が大きく変わる。したがって、この時系列信号に対してウェーブレット変換をほどこせば、その部分が高周波成分として取り出せることになる。また、低周波成分をみれば移動物体がわかる。このような高周波成分や低周波成分を検出するには、ウェーブレットのサポート長に見合うフレームが必要であり、フレーム数が少いほど計算時間が少くてすむ。言い換えれば、サポート長が短いウェーブレットが望ましい。そこで、サポート長が短いDaubechies のウェーブレットを用いて移動物体検出を行なう。

13章 動きベクトル検出

物そのものの動きは、その物の輪郭を調べることによって分かることが多い。例えば、手の動きなどがそうである。この章では、手の動きに焦点をあて、複数個の手の輪郭から手がどのように動いたかを調べるために、動きベクトルを高速で検出する方法が述べられている。

通常、物の輪郭は曲面で表されるが、曲面の動きを捉えることは難しいので、平面に射影した曲線から動きベクトルを検出することを考える。線画の編集のところで述べられているように、曲線をウェーブレット分解すると低周波曲線が得られる。ウェーブレット分解によりダウンサンプリングされるので低周波曲線の節点数は原曲線の半分になっている。この低周波曲線をさらにウェーブレット分解すると、節点数はまたその半分になる。このような操作を隣り合う輪郭曲線に対して行ない、節点数を十分に減らした上で、CG分野におけるタイリング技法を用いて節点どうしを結合する。そして、両輪郭曲線を復元し、まだ結合されていない節点だけを結んでいく。これを繰り返すと最終的に隣り合った輪郭曲線が結ばれ、動きベクトルが検出できる。ここではウェーブレットとして、タイリングのために開発された擬ウェーブレットを用いる。

14章 画像の高速照合検索

膨大な画像データベースから、質問者がイメージする画像(質問画像)に類似した画像をキーワード検索ではなく、画像そのものを用いて照合検索する手法を述べる。高速照合検索を行なうためには、画像情報を減らさなくてはならない。ここでは、データベースにある全ての画像をHaar ウェーブレット分解し、多重高周波成分を構成して2値量子化する。こうすることによって、情報量を大幅に減らすことができる。そして、画像の座標をたてにならべ、それぞれの横に、画素値1をもつ画像番号をリストする。質問画像に対しても、Haarウェーブレット分解と2値量子化を行ない、類似尺度を導入して画像データベースにある画像ごとに、作成したリストにしたがってコアを計算する。スコアが一番小さい画像が質問画像にもっとも近い画像であると判断する。
1章 はじめに

2章 離散ウェーブレットとは
  2.1 ウェーブレット変換
  2.2 離散ウェーブレット
  2.3 ウェーブレット関数の構成法

3章 Daubechies のウェーブレット
  3.1 直交ウェーブレット理論
  3.2 コンパクトサポートをもつウェーブレット

4章 合成積型ウェーブレット

5章 双直交スプラインウェーブレット
  5.1 Bスプライン関数
  5.2 Bスプラインウェーブレット
  5.3 正規直交スプラインウェーブレット
  5.4 カーディナルスプラインウェーブレット

6章 擬ウェーブレット

7章 Mallat 変換と多重解像度解析
  7.1 Mallat 変換
  7.2 多重解像度解析

8章 画像の分解と復元
  8.1 標準分解
  8.2 非標準分解 I
  8.3 非標準分解 II

9章 画像のエッジ検出

10章 画像圧縮

11章 線画の編集

12章 移動物体検出

13章 動きベクトル検出

14章 画像の高速照合検索
 
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